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原点回帰。日本のアパレル企業の悪しき習慣

2016/12/30 08:00


今、日本のアパレル企業において、若手デザイナーの間で実力を発揮できずに悩んでいる人が少なからずいる。

デザインが企画として通らないのだ。

「デザイナーをして勤めているのに、デザイナーの仕事をさせてもらえない」

一体どういうことなのだろうか。

今回は、デザイナーがデザイナーとしての仕事が出来ない日本のアパレルの現状と、その結果アパレル業界全体にどのような悪循環が起こっているかお話しする。

 

デザイナーがデザイナーとしての仕事をさせてもらえない




企業に入った若手デザイナーが口々にこう言う。

「今やっている仕事は、入社前に思っていたデザイナーの仕事ではない」

新入社員が希望を抱いて会社に入ったものの、思っていたよりも仕事として地味でやりがいがなかった、というような趣旨の声は良く聞くが、そういった単純なものではない。

この現状の背景には、顕著に日本の悪しき習慣が現れているのだ。

 

単純作業の繰り返し




もちろん、デザインの絵型は描く。

だがその元になっているデザインは、要するに“パクリ"である。

ファッションだけに限らず、デザイナーという仕事をしている人であれば分かる事だが、ただ単純に"パクリが悪い"という事を言っているのではない。

実際、世間にあるものの大半が、何かを参考にして作られたものである。

ただ、それが行き過ぎるから、問題なのだ。

一番酷い企画の例で挙げると、競合ブランドの店頭で売られている商品を買い、それを自社と提携しているOEMメーカーとの商談へ持って行き、"この商品のサイズ感そのままで、生地だけこれに変えて下さい"と言う。

そして、そのように企画した商品に対してお客様の反応が良ければ、来シーズンもほぼほぼ形を変えずに生地をシーズンにあったものに変えて、生産する。

工場に出す仕様書(工場へどのように縫うか指示をしたもの)や、副資材の手配等、雑務としては単純作業の繰り返しである為、使う時間は明らかに減り、確かに効率性が良いことは理解出来る。

 

効率性を求めすぎた結果・・・




このような企画・生産を繰り返している、またはこのような事例にニアな事を繰り返した結果どのような事が起きるか?

消費者に飽きられてしまうのだ。

どこも同じ商品ばかりだし、一番安いところで買おう!という思考になるのは当然である。

今、商品の抜本的な見直しをしない限りはずっと価格競争が続くばかりだし、そうなると売り上げで勝つブランドは当然決まってくる。

 

ブランドコンセプトとニーズの見直し




そもそも、どのブランドにも、立ち上げ当初"ブランドコンセプト"があったはずだ。

対象となるメインターゲットを決め、その人が何歳くらいで、何の仕事をしていて等、ライフスタイルを仮定した上でそれに合った洋服の提案をしていく事こそが正しい企画の仕方である。

正しい企画の仕方を無視して生産をしていくと、だんだんと本来のブランドコンセプトからずれていく。

せっかく立ち上げたブランドに共感して買っていてくれたファンも、当然ながら離れていく事になる。

 

消費者目線の商品作りを




デザイナーが正しい企画のセオリーに習ってデザインをして行き、特定のファンを囲い込めることが出来ればいいのだ。

服が売れづらい事も、本社の会議では天候の悪さ等の不可抗力だという意見が出がちだが、店頭では商品自体の検討もしている。

お客様の意見を聞いているし、商品の何が悪いかを一番分かっているのは販売員である。

もっと言えば、若手のデザイナーなんて最近まで消費者だったのだ。

改善するべきポイントをたくさん知っているし、このブランドにこんな商品があれば良いのに、と思う事だろう。

 

年功序列問題




最後に、一番根深い問題である、年功序列問題だ。

一般的に大手のアパレル会社は体育会系の上下関係が築かれているところが多い。

要するに、若手デザイナーには、雑務ばかり押し付ける傾向にあるのだ。

先輩デザイナーが若手を育てようとしない為に、若手デザイナーも本来の企画の仕方を忘れるし、自分で考える事が出来なくなる。

企画をする上で意見が尊重される方は当然先輩デザイナーである、という事がまずおかしい事に気がつかないのだろうか。

前述の通り、一番消費者に近くて新しい感覚を持っている方は明らかに若手だ。

先輩デザイナーやMDにデザインをボツにされてしまった場合、コンセプトとニーズを捉えていて売れそうな商品だったとしてもそのデザインが表に出る事はないのだ。

例えば、40代の女性が20代の服をデザインする事には無理があるが、これは決して悪い意味ではない。

感覚は年を追うごとに透過されていくし、実際に着れなくなった年代の服の感覚がわからない事は当然の事である。

その代わりに、計り知れないほど経験値は高い。

ただ若手デザイナーのデザインをボツにするわけではなく、今までの経験を元にアドバイスをするという考えの先輩デザイナーがいれば、若手は育つし、良い企画もするようになるだろう。

 

抜本的な解決が必要



今、服が売れづらい原因はもちろんこれらが全てではないし、一部に過ぎない。

よく会議で言われがちな、経済効果や天候等の不可抗力等ももちろん例の一つに挙げられる。

だが、それに逃げてばかりで、商品自体、または企画自体の見直しをしない限りは消費者の心を捉えるような商品を作る事は出来ないし、絶対的なファンを囲い込む事も出来ない。

効率性を求める事も、年上を敬う心も大事だが、クリエイティブをする上でそのような問題は最優先事項とは言えない。

旧態依然としたアパレル業界を変えることが出来ないのは、新しい考えを取り入れない事、消費者目線の企画をする人がいない事も理由の一つであるという事に、気づいて欲しい。