アパレル産業大国バングラデシュ、発展の理由と課題とは

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現在のアパレル産業において、なくてはならない国、バングラデシュ。アパレル製品輸出高は、世界で中国に次ぐ第2位を誇っている。

国連が指定する“最貧国”のひとつであるバングラデシュは、いかにしてアパレル産業を発展させてきたのか。また、その影にひそむ多くの課題についても紹介したい。
 

アパレル産業大国バングラデシュ




バングラデシュは、南アジアに位置する、面積14万7千平方キロメートル(日本の約4割)人口1億6,175万人ほどの国。

衣料品輸出額の国別ランキングでは、中国に次ぐ第2位にランクインしている。

2017年外務省が発表したデータによれば、バングラデシュの主要輸出品目はニットウェア(46.8%)、既製品(ニットを除く)(36.2%)、革製品(3.7%)、ジュート製品(2.8%)、冷凍魚介類(2.1%)、ホーム・テキスタイル(1.9%)、石油製(0.2%)で、衣料品が占める割合は約8割にものぼり、これらを主要貿易相手国であるアメリカやヨーロッパ、アジアなどに輸出している。
 

アジア最貧国はいかにしてアパレル産業を発展させてきたのか


かつてはアジア最貧国とも呼ばれたバングラデシュがアパレル産業を発展させてきたのには、大きく分けて2つの理由がある。

まずひとつは、人件費の安さ。以前から製造工場が中国に偏りすぎていること、中国国内の賃金水準が上昇しコスト削減のメリットが薄れてきたことを懸念し、いわゆる「チャイナ・プラスワン」として東南アジア諸国が注目されはじめた。中でもバングラデシュは、その人件費の安さだけでなく、人口の多さもポイントになった。

工員の労働コストは中国の3分の1ほどで、同じく労働コストが低いミャンマーやカンボジアに比べても圧倒的に人口が多く、働き手が集まりやすい。安く、大量生産できるというメリットがあるバングラデシュは、ファストファッションをはじめ多くのアパレルブランドが注目した。



出典:日経ビジネスオンライン

ふたつ目は、バングラデシュという国の特徴にある。

元々イギリス領であったバングラデシュは、昔からニットや織物の縫製をイギリス向けに輸出していた。

首都のダッカからほど近い距離にあるナラヤンガンジ地区は「ニットの聖地」と呼ばれ、非常に良質な生地をつくることで知られている。

また、首都付近のサウスダッカ工業団地では二つの大きな橋が建設され、ダッカ中心部とのアクセスが格段によくなり、物流がスムーズになったことも挙げられる。
 

アパレル産業発展の裏にひそむ課題とは


バングラデシュがアパレル産業大国として経済発展を遂げた裏には、大きな課題もある。

2013年4月、ダッカ近郊ビルの「ラナ・プラザ」縫製工場ビルが崩壊し、死者1,127人、負傷者2,500人以上を出す大惨事が起こった。当時「ラナ・プラザ」には5つの縫製工場が入っていて、3000人以上が勤務していた。

このビルが崩壊した理由は、正規の許可手続きなしに建築され(5階以上の3階部分は違法に建増しされていた)もはや建物としての強度を失っていたこと。上層部に設置された4基の大型発電機の振動と数千台のミシンの振動が引き金となり、崩壊を誘発したという。
 

崩壊した「ラナ・プラザ」ビル 出典:Wikipedia


さらにこの事故を詳しく調査していくと、労働・安全環境が劣悪な状態であった事も浮き彫りになった。

事故前日にはビルに亀裂が入っているのが見つかり、地元警察が工場の閉鎖を指示。ところが事故当日、工場経営者は避難していた従業員に仕事に戻るよう命じ、従業員が戻って作業していたところビルが崩落した。

また、日ごろから肉体的や精神的、性的な虐待を受けていたり、時間外の長時間労働を強いられたりと過酷な労働状況であったという。

「ラナ・プラザ」事件は氷山の一角で、バングラデシュには「安く・速く・大量に」製品を仕上げるために、劣悪な環境下で労働を強いられている従業員も少なくない。けして安全とは言えない建物の中で、不当な条件のもと、多くの人々が先進国のための衣料品を作っているのだ。

「ラナ・プラザ」ビル崩壊は世界中に大きな衝撃を与え、この事故をきっかけに、アパレル・小売業者の多くは行動規範をつくり、商品の製造元に労働者の権利(団結権と団体交渉権)を保障するよう求めている。
 

環境汚染の問題も


労働状況以外に指摘されているのが環境汚染の問題だ。靴やベルト、財布などに使われる革の前処理を行う革なめし工場は、毒性の強い化学廃棄物を川に廃棄して環境を汚染しているという。

以前、ダッカ近郊のハザーリーバーグには、150以上もの革なめし工場があった。あたりは化学物質やはいだ革の破片が放つ腐臭で満ち、隣接するベリガンガ川も汚染されたと考えられている。

政府は2017年、ハザーリーバーグの革なめし工場への電力供給を停止し、下水道や廃水処理場が存在するシャバールにある新たな製革工場地域への移転を命じた。

しかし、シャバールにおいても大量に出る有害廃棄物を処理するには不十分で、結局化学物質をダルシュワリ川に垂れ流し、有毒な廃棄物を周辺の空き地に放棄し環境を汚染しているという。

AP Photo / A.M. Ahad


低コストで大量に商品が作れるのは、ブランド側からすれば大きなメリットである。

しかし、そこに多くの犠牲を払っている事も忘れてはならない。

「ラナ・プラザ」事故後、「ALLIANCE(バングラデシュ労働者の安全のための同盟)」や「Sustainable Apparel Coalition(衣料品の生産における労働や社会、環境面に気を配り、持続可能な製品を作る同盟)」など、労働者や環境に配慮した多くの同盟がつくられたが、すべての工場で守られているかと言えばそうではない。

わたしたちもいち消費者として、上記の同盟に加入している会社を選択するなど、できることからはじめなくてはならないだろう。