ミウッチャ・プラダ:補完し合うファッションとアート

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滑らかに輝くサテンをふんだんに使い、不思議と目が疲れないようなビビッドで美しいカラーリングとテキスタイルで、かわいくそれでいてシックにまとめあげられたPrada(プラダ)2019春夏レディースコレクション。
 
これまでもプラダと強いつながりを持ってきたオランダの建築家Rem Koolhaas(レム・コールハース)がデザインしたミラノのFondazione Prada(フォンダチォーネ・プラダ)でショーは行われた。
 
同施設は、アートとモードが共存する場として2015年に建設された。ここで行われるイベントは、つまりファッションとアートの関係を考えさせてくれる機会となる。
 
デザイナーMiuccia Prada(ミウッチャ・プラダ、以下ミウッチャ)のアートへの情熱は今回どのように具現化されたのだろうか。

 

「アートだけじゃ足りない時だってある」

 
今回のコレクションに関して、バックステージでミウッチャがVOGUEに語った。
 

“On voulait ramener de la vie à la Fondazione (Prada). L’art ne suffit parfois pas.”
「私たちはこのフォンダチォーネに生命の息吹をもう一度吹き込みたいと思ってやってきました。アートだけじゃ足りない時もありますから。」(VOGUEより)

 
何年もの間トップクラスに君臨し続けるプラダが実際に息吹を失ったかと言われれば首を傾げたくなる。先進国に住む限り、ブランドのトライアングルを見ない日はない。

出典: https://www.instagram.com/lubakilubaki/


写真はパリを拠点とするフォトグラファーAlexandre Gaudin(アレクサンドル・ゴーダン)による2019SSコレクションのストリートスナップ。
 
「アート」という言葉がまるで一人歩きをして異常なほどに広義的になってしまった現代。作り手が歴史と物語を込めて、ウィットでめかしこませた作品という意味ではファッションもアートの一部かもしれない。
 
けれど、いわゆるアートは観聴きする作品であって、受け取り側のその動作のうちに流行はない。一方で「着る」作品である洋服においては流行が受動する方法を支配していると言えるだろう。
 
「着る」ことで鑑賞者は作品を自分のものにすることができる。そして自分のセンスで、他の作品と混ぜ合わすことができる。これはファッションが持つ独特な鑑賞法である。
 
またフランスのニュースサイトCapital(カャピタル)はミウッチャのアート観を次のように評価した。
 

“Pour elle, l’aspect éphémère de la mode est compensé par l’assise et la pérennité de l’art.”
「彼女(ミウッチャ)にとって、ファッションが持つ短命という側面は、アートの長く残り続けうる性格に補われるものだ。」(Capitalより)

 
アートの中には、さかのぼれば1000年も2000年も超えて鑑賞され続けてきたものもある。数年着れば廃れることもあるファッションとは大違いである。
 
ファッションをアートと共存させるフォンダチォーネ・プラダではそのファッションの短所をアートが補完することが可能であるということだ。
 
 

UGLY CHICに直面したファッション

 
ファッションを着て楽しむうえで、シックであることの重要度は当然高い。その「シック」は時代時代に形を変え色を変え、姿性格を変える。
 
消費者が仮にその見た目だけを求めたとしても、新しいシックを作り出す人たちの頭には必ずストーリーがある。ダッドスニーカーがバズる今は過去の懐古とUGLY CHICがキーワードだ。

出典: https://www.instagram.com/prada/

"La mode ne s'était jamais ouverte au moche, (…). J'ai initié cela, ce qui m'a valu beaucoup de critiques. Mais le succès de Prada vient de là". 
「ファッションは今までみょうきちりんなんか求めてなかった。私がそれを始めたの。批判もたくさんされた。でもプラダの成功はそこから生まれたの。」(L’EXPRESSより)

 
2016年夏のPRADA Journalのスローガンは“Illuminations, ombres et mirages. Il ne faut pas se fier aux apparences”(イルミネーション、影、幻想。見た目に騙されないで)だった。それはまさに、視覚にリアリティや簡素で大胆な美しさを求めない近代から続くアートの性格そのものである。
 
 
アートが持つ永続性と、ファッションの自己表現を可能にする「鑑賞方法」。そしてその二つが混ざり合うフォンダチォーネ・プラダ。
 
そんなミウッチャのワールドはこれまでもこれからも老若男女を色とりどりに飾る。いつまでもコレクションを見ることが飽きないブランドの一つであり続けるだろう。