舘鼻則孝展「CAMELLIA FIELDS(カメリア・フィールズ)」開催中!舘鼻氏が想うアートの役割とは

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現在、東京・天王洲の TERRADA Art Complex に開廊したギャラリーKOSAKU KANECHIKA にてアーティスト舘鼻則孝の最新の個展「CAMELLIA FIELDS」 が開催中。

舘鼻則孝といえばシューメイカーという印象が強いかもしれない。大学の卒業 制作で発表したヒールレスシューズを Lady Gaga が着用したことで、一躍脚光 を浴びた。

その後もシューメイカーとして活動を続けるも、2011 年の 3.11 の体験を期に、自身の生と死を見つめ、作品化に取り組んできた。

近年ではアートの領域でも精力的に作品を発表し、昨年 3 月にはパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を監督。 本展で発表した新作カメリア・フィールズは、自身の過去の記憶と日本の美術史、歴史を重ね合わせ、日本独特の死生観を表現した。

アート作品を数々生み出してきたが、本展ではそこに存在する物質を含む“空間”で表現するという新たな試みが感じられる。 観る者にとっては、彼の作品を観るのではなく、体験するといった感覚に近いだろう。

今回は舘鼻氏に、制作過程や作品にかけた想いについて訊いた。



Photo by GION, ©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
 

舘鼻 則孝(たてはな のりたか)
1985 年、東京生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で 育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で、幼少期から手でものを作ることを覚える。2010 年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。 「イメージメーカー展」(21_21 DESIGN SIGHT)、「Future Beauty」(東京都 現代美術館ほか国際巡回)、「舘鼻則孝 呪力の美学」(岡本太郎記念館)等で作 品を発表。また、2016 年 3 月にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を監 督するなど幅広い活動を展開している。作品はメトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵されている。


 
Q:まずは、本展の中心となる新作「カメリア・フィールズ」について伺いたいのですが、数多くある花の中で何故カメリア(椿)を選んだのですか?
 

 日本人の死生観を表現した作品の一連の流れとして始まったのが、自身の死を見つめる「トレーシーズ・オブ・ア・コンティニュイングヒストリー」、次に仏教の来世思想としての心中を人形浄瑠璃文楽を通して描いた舘鼻文楽「ラブス ーサイズ・オンザブリッジ」、そして今回の椿をモチーフにした「カメリア・フィールズ」です。

近代以前、椿は姿のまま落ちる様子が“潔い”と武士に好まれたことから、武家屋敷や寺院に椿が植えられていたそうです。 そんな日本人が持つ独特の死に対する考え方を作品として表現しました。

学生時代は椿をモチーフとした日本画を描いたり、卒業制作のヒールレスシューズに合わせた友禅染のドレスもモチーフとして椿を用いていました。




Photo by GION, ©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
                                                   
Photo by GION, ©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
 

Q:作品の着想源ともなった、「個人的な体験」とはどのようなことでしょうか?
 
僕は武士の町として知られる鎌倉で育ちました。鎌倉にはたくさんの寺院があるのですが、その中でも覚園寺に訪れたときの光景は今でも鮮明に記憶されています。

大学生の時、雨上がりに訪れたその場所は一面湿った苔で染まり、椿の木の根 元には雨で落とされた椿の花が赤く円を描いていました。 冬だったので咲いている花は他になく、静かな景色の中に凜とした姿で存在し ていたその光景が、脳裏に焼き付いていたのです。

椿の場合は多くの花のように“散る”という感覚とは違い、花の姿のままで落ちていきます。

この光景を“死”を通して“生”を見出す日本独特の死生観として表現できればと思い、「カメリア・フィールズ」を制作しました。 

 

Q:全て手彩色されたということですが、どれくらいの制作期間を要しましたか?完成までの過程も教えてください。
 
日本の伝統的産業である高岡銅器を扱う富山県の工房の伝統工芸士に直接イメージを伝え、原寸大の椿の原型6種類をもとに鋳造してもらいました。 

展覧会場の空間に合わせた直径3mの円を描くために、720個の椿を用意し、全てアトリエで手彩色しました。チームはかなりの人数で動き、制作期間は2ヶ月半ほど。
 
椿の赤い絨毯のように見せたかったので、密度が高くなるよう720個という相当な数が必要でした。

 

Photo by GION, ©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

(オープニングレセプションでの様子)

 

Q:開廊したばかりの真新しいギャラリーKOSAKU KANECHIKAのフロアや壁の白と、椿の深紅のコントラストがとても美しく映えていますね。本展では初公開となる絵画作品も多数展示されています。これらはカメリア・フィールズや過去の作品とはまた違った印象を受けます。
 
創作活動の原点となっている、工芸的な手仕事によって完成する作品という点は共通しています。
 
一見キャンバスにも見えますが、革が埋め込まれその上に色を重ねて七宝柄を描いています。
 
「エンボスドペインティングシリーズ」では、アクリルガッシュで描かれたペインティングを丸ごと鏡面素材とも言える銀でコーティングしました。
 
この七宝柄は、花魁の高下駄をモチーフとした「フローティングワールドシリーズ」、遊女のかんざしを彫刻作品として完成させた「ヘアピンシリーズ」などにも描かれていますが、一味違うテイストを持っています。
 
七宝柄は日本では8世紀頃に誕生したと言われていますが、このような複数の円が重なりあった図柄は日本だけではなく西洋東洋で同時多発的に生まれたそうです。

オリエンタルな東洋のモチーフにも見える一方、違う角度からは西洋のファッショナブルな要素が強く、1つの柄に異なる文化や意味が内包されているという点が自分自身の背景と重なると思い、モチーフとして大学時代より長く用いています。


     
©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA


©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA


 
Q:シューズ、モニュメント、インスタレーション、文楽など現代アーティストとして様々な才能を発揮されていますが、それらに共通する“アート”の役割や、作品の先にある目的は何だとお考えですか?
 
アートはいわば、ヴィジュアルコミュニケーションで、自己のアイデンティティーを世界に向けて表現したり、発信するための手段だと考えています。

これまでは日本の文化や歴史といった、“日本”という大きなくくりだったのが、今回は個人的な記憶の中にある光景を主題とすることがスタート地点となり、日本独自の死生観を作品として表現することに至りました。

自分の記憶の中にある風景が着想源になったという意味ではこれまでの作品と比べて私的な要素が強い作品になったかもしれません。意図したのではなく結果的にそうなったのですが、自分自身これまで物質的に作品を追い求めて来ましたが、空間そのものを体験するインスタレーションア ートへも表現の幅が広がっています。

今回の展覧会では過去の作品も展示されているので、それらの作品を通じてその変化を感じ取ってもらえるのではないでしょうか。

“どういう空間にお招きするか”ということを念頭に置いた今回の展覧会で、日本の歴史や美学、日本人のアイデンティティーを作品として表現し、体感してもらいたいと思います。 


Photo by GION, ©NORITAKA TATEHANA, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

 
展覧会:     舘鼻則孝展「CAMELLIA FIELDS」
会場:             KOSAKU KANECHIKA
          東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 5F 
                          E-mail: info@kosakukanechika.com
会期:             2017年3月11日(土)〜 2017年4月28日(金)
開廊時間:     11:00〜18:00(火・水・木・土)
          11:00〜20:00(金)
          休廊(日・月・祝)
会場ウェブサイト:http://kosakukanechika.com/



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