【エシカル談義 #4 鎌田安里紗×布田尚大】エシカルファッションは拡大路線を進むべきなのか

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近年、日本のファッションシーンでも注目度を高める「エシカルファッション」。

そんなエシカルファッションの普及に先駆的に取り組む人達の声を聞いた特別企画「エシカル談義」。

エシカルファッションの正しい普及の仕方とはなんなのか。そもそもエシカルの定義とはなんなのか。エシカルに対する期待や疑問をそれぞれのエシカル論で語っていただいた。

続いては、エシカルファッションブランドINHEELS(インヒールズ)でCOOを務める布田尚大さんと、エシカル・ファッションの情報発信、途上国支援と活動の場を広げているモデルの鎌田安里紗さんにお話しを伺った。

バックナンバー
【エシカル談義#1 龜石太夏匡×信田阿芸子】エシカルファッションの付加価値とプロデュース戦略

【エシカル談義#2 岡田有加×大釜翼】エシカルが普及するための効果的なアプローチとは?

【エシカル談義 #3 岡田有加×大釜翼】 完璧を求めず、中途半端な人を増やす。



 

エシカルファッションに興味を持ったきっかけ



鎌田:そもそも布田さんは何でエシカルに興味を持ったんですか?


布田:僕は、元々仕事もライフスタイルも全然「エシカル的」ではなかったんですよ。

サラリーマンだったので月曜から金曜まで働いて、金曜の夜は合コンとクラブに行って、次の日はパーティーを企画してってしているうちに同じことの繰り返しばかりで少し退屈になっていました。

そこで、何か新しいことがしたいなと思って色々なセミナーとかミートアップに出ていたら、たまたま『INHEELS(インヒールズ)』のゆかさん(代表の岡田有加)が登壇するイベントに参加してこれはめっちゃくちゃ面白いなと思って、そこからエシカルファッションに興味を持ったんです。

鎌田さんは、どうして興味もったんですか?


鎌田:私は途上国問題からですね。

そのきっかけは、10年前の14歳の時にインドネシアに行って生活環境の違いに驚いたことです。

それから高校生になってボランティアに参加するようになりましたね。

そういった活動を続ける中で、ある時「学校建てられるだけだと迷惑なんだよね。ハコだけ作られてもちゃんと教育システムが回らないから」という現場に詳しい方の意見を聞いたんです。

まさか「迷惑」と思われてるなんて考えもしなかったけど、ただチャリティやボランティアをするだけではそこまで効果がないのかもしれないなってその時思いましたね。そこから他にどんな貢献の仕方があるだろうと調べてフェアトレードという概念を知りました。

当時たまたまモデルとして雑誌に出ていたこともあり、ファッションとしてフェアトレードを採用したブランドはないか探してたら『People Tree(ピープルツリー)』(フェアトレード専門ブランド)を見つけたんです。

そこからピープルツリーのトークショーに行くようになったりして本格的に興味を持ちました。

ただ、私も当時は今よりもっとギャルファッションが好きだったし、エシカルやフェアトレードの考え方は共感するけどデザインとして欲しいものがないな〜みたいな感じの状況が数年間続いてました。

その時にインヒールズが現れ、背中ががっつりあいたトップスとか、膝上のスカートとかタイトな服とかがあって、それまでエシカルファッション界に存在しなかったデザインばかりだったので驚きました。

その後、ゆかさんの「コンセプトとしてエシカルを掲げているけれどデザインは自分の好きなもので良いじゃん」というスタンスに共感してインヒールズとはよく関わるようになりました。

それと同時期にファストファッションがどんどん浸透して大量生産、大量消費の問題も意識するようになりましたね。


鎌田安里紗(かまだ ありさ)
1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に単身上京。在学中にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。撮影などの活動を続けながら、2011年に慶應義塾大学・総合政策学部に現役合格。同大学の大学院に進学、芸能活動も続けている。途上国の支援活動に関心が高く、エシカル関連のイベントやトークショーへの登壇や自身のブログでも情報を発信。JICAの『なんとかしなきゃ!プロジェクト』のメンバーにも選出され、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画なども行っている。


 

ファストファッションの問題は労働環境?



布田:そうです、でもそれだけではないです。


鎌田:労働賃金が最低賃金を下回っていて、まともな食事がとれないケースや、子供を学校に行かせられないケースもあるし、あとは染料とかも安いのを使うと水や土が汚れたり、吸い込んで健康被害にあってしまうことなど、作るプロセスに問題がたくさんありますね。

それと、販売価格が安いことで、購買行動に変化を引き起こしてしまうという副次的な問題もあります。
 


布田:とりあえず買って一回着て捨てるみたいな。


鎌田:「使えそうだからとりあえず買っとこうかな」みたいなのがすごく増えたなぁ、とここ数年感じますよね。


布田:そうそう


鎌田:エシカルファッションは生産プロセスだけでなく消費行動に対しても問題提議していると私は思っています。


布田尚大(ふだ なおひろ)
1983年生まれ。エシカルファッションブランドINHEELS(インヒールズ) COO。東京都豊島区出身、一橋大学社会学部・同大学院 社会学研究科修了。社会学修士。日本マーケティング学会会員。 2013年INHEELSにプロボノ(本業のスキルを活かして社会貢献活動を行うボランティア)としてジョイン。「意識高い系」以外の人にも伝わる新しいエシカルファッションを広めるために活動。INHEELS広報誌やファッションフリーペーパー『幸服無限』、ビジネスメディアINSIGHT NOW!など、様々なエッセイを執筆。2016年4月より現職、法人向け事業の推進、マーケティング・ブランディング戦略の立案を行う。



布田:そうですね。「エシカル」であること証明をするための認証機関があったり、インヒールズもそうだけど実際に生産地に出向いてしっかり生産現場の人たちと顔を合わせて仕事をしている。

生産現場で働く人たちとの関係を築いていくと、安い賃金で何時間も拘束して自分の利益のために働かせようなんか思わないですよね。


鎌田:そもそもファストファッションブランドみたいに会社規模が大きいところは間に商社が入っていて、直接工場とやりとりしていないことが多いから、ブランド側も生産現場を全て把握することは難しい。

少しずつ知ろうとする人は増えているとは思うけれど。

 

エシカルファッションは拡大すべきか。



鎌田:私と布田さん意見違いそう(笑)。拡大思考ですよね?


布田:拡大思考ですよ。


鎌田:私は、拡大した時に抜け落ちるものってないのかな?と不安なところが多いんです。


布田:やっぱり拡大したほうが社会的インパクトは大きいし、その結果より世界は「エシカル的」になると思うんです。

例えば、インヒールズの服が売れた数だけ僕たちが提唱するエシカルが届いていると考えて、それを細々と続けて「年に100枚売ってます。」とかだと正直そこまで社会にインパクトがないなって思うんです。

なので、どんどん拡大していかないとな思っています。

ただ、鎌田さんのおっしゃる通り何かが抜け落ちちゃうと言うのは確かにあると思っています。

拡大していくとそれだけ工場で働く人の数も増えていくわけで、先ほど話した「現場の人と顔を合わせ、声を聞いていれば変なことは起こらない」って状況から離れていくのは間違いない。

だけど、それって産業用ロボットとかの進化で工場が圧倒的に効率化されたり、主にテクノロジーの発展で別の角度から改善されていくと思うんです。

そういうあらゆる可能性も配慮した上で、ブランドとしてはまず拡大していきたいと思っています。

鎌田さんとしては、やっぱり拡大はなし派ですか?


鎌田:もちろん、ある程度の規模までは拡大すべきだとは思うんですよ。
 
この前、スタディーツアーを企画して岡山に行ったんです。
 
応募してくれた女の子22人と一緒に布を織って、裁断して、縫製して、加工してという生産過程を見学しました。
 
そのツアーでやっぱり繋がりが見えるのが大事だと思ったんですよ。

お店で並んでいる完成品の服だけでなく、作っている人やプロセスを見ると商品に対するイメージとか服に対するイメージとかが変わると思うんです。
 
自分が着てるものや、買っている物の先には、作っている人がいることや自然と繋がっているということが見えることで買った服や物に対する満足度とか納得度がとても高くなりますよね。

でも、こういう繋がり方ってどうしても数量的な限界があるじゃないですか。
 
その限界までは増やしていくことは必要だと思うんですけど、ある程度の所までいったらキャパオーバーになると思います。


布田:そういう意味では考え方が違う部分かもしれないですね。
 
もちろん僕も人との繋がりはエシカルの本質だと思っているんですよ。
 
ただ、鎌田さんのおっしゃるようにどうしても数量的な限界があるからそれ以上は、、ってことではなく、そういう繋がりを知らなくても「エシカル」だと言われているブランドを買ってさえいれば、まず悪いことにはならないんだよっていう概念が根付くのが一番良いのかなと思っています。
 
そうすると、よりたくさんの人に着てもらえるかなって思うんですよね。


鎌田:2つ必要なのかもしれないですね、「とりあえずここで買っておけば大丈夫」みたいな安心感のあるスタンダードなエシカルブランドと、もうちょっと「ラグジュアリー」を追求するエシカルブランドといったようなイメージです。
 
ラグジュアリーじゃないですか、作った人に会えるって。そういったより自分の幸福度を上げられるところがエシカルのいいところの1つじゃないかなと思います。
 
布田さん的にエシカルの選択肢を知っているとハッピーになる理由ってなんですか?


布田:シンプルに、気分が良いってことだと思います。

インスタグラムみたいなSNSを利用する気持ちにも近いかなと思っていて、おしゃれなカフェに行って写真をあげると自分がちょっと「リア充」になった気がするじゃないですか笑。そんな感じ。
 
エシカルファッションをチョイスすることで自分をちょっと肯定的に見れるようになるというか。


鎌田:ここ数年で買った服は、その服を作っている人を知っていたり、会ったことのある場合が多いから普通にお店でエシカルファッションを買うのとは少し違うと思うんですけど、やっぱり「知っている」って気持ちいいことだと思います。
 
例えば「このデニム可愛いね」って言われた時に、知っているからこそ「これはこんな人がこんなところで、こんな風に作っている服なんだよ」って言える。そのコミュニケーションで嬉しさが一つ増えますよね。


布田:人に話すのが大事なのかもね。


鎌田:話すのも楽しいし、普通は知ることがないような服の裏側を知っていることでちょっと清々しい気持ちになれますよね。


布田:着る理由があるみたいなのが快感かもしれないですね。

「なんでその服着てるの?」って聞かれた時に、これはこうだからって自信を持って言えること。


鎌田:確かに理由は大事ですね。自分が着るもの、持つもの一つ一つに理由を求めると自分の感覚が研ぎ澄まされていく感じがしますよね。




次回、「地方とテクノロジー、エシカルを加速させる2つのキーワード」






 



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