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【エシカル談義#1 龜石太夏匡×信田阿芸子】エシカルファッションの付加価値とプロデュース戦略

2017/06/19 14:01


近年、日本のファッションシーンでも注目度を高める「エシカルファッション」。

そんなエシカルファッションの普及に先駆的に取り組む人達の声を聞いた特別企画「エシカル談義」。

エシカルファッションの正しい普及の仕方とはなんなのか。そもそもエシカルの定義とはなんなのか。エシカルに対する期待や疑問をそれぞれのエシカル論で語っていただいた。

第1回は、Fashion Studies主催の勉強会『さすてなぶるファッション』での信田阿芸子氏(日本ファッション・ウィーク推進機構国際ディレクター) と龜石太夏匡氏(株式会社リバースプロジェクト代表取締役)のトークを収録した。(Fashion Studiesはファッションを体系的に学ぶ場。詳細についてはこちら http://fashionstudies.org/about/

 

日本のファッション業界における「エシカル」「サスティナブル」



信田:私は、10年ほどJFW(ファッション・ウィーク推進委員会)でファッションウィークに関わっています。その中で、様々な国のファッションを見ていて思うのが、世界中と比較しても日本はエシカルやサスティナブルを発信するブランドもプロジェクトも少ないということです。

ロンドンやミラノでは、当たり前のように大掛かりなエシカルムーブメントを起こすようなプロジェクトやプロモーションが行われています。

日本も最近増えてはきましたが、まだまだ少ないので問題意識をもっています。

原因として思うのは、日本でのエシカルファッションのイメージって「かっこいいものと」いうより、「社会貢献」的な要素が強くて、若手のデザイナーからすると少し取っ掛かりにくいコンセプトだな感じているのかもしれないですね。

やっぱりファッションはかっこよくないと成立しないわけですので。

とはいえ、少しずつではありますがそういったプロジェクトやブランドは増えてきているので、日本でもエシカルやサスティナブルを大きくプロモーションしていくタイミングとしてはいい時期かなとは思っています。

ただ、プロモーションの方法も『ステラ マッカートニー』のような一人のスターデザイナーを育てるというよりは、プロジェクトベースでいろんな切り口で少しでも多くの人がエシカルに触れる機会を増やすことで、無理なく浸透させていくのが一番いい形なのかなと感じております。


信田 阿芸子 (しのだ あきこ)
一般社団法人日本ファッション ・ ウィーク推進機構国際ディレクター。ニューヨーク、イタリア、パリ他世界各都市で日本ブランドのプロモーションイベントなどを実施し、日本のデザイナー、ブランド、ファッション・ウィークの海外発信および若手クリエイターの海外進出支援を精力的に行う。世界のファッションビジネスで影響力のある500名として「BoF 500」に2014年・2015年選出。




ーーーまさにリバースプロジェクトこそ、プロジェクトベースでエシカルやサスティナブルを発信していてるかと思いますが、リバースプロジェクトはどういった経緯で立ち上げたんですか?


亀石:僕らがこのリバースプロジェクトを立ち上げたのはリーマンショックの翌年でした。

その当時はエシカルって言葉は認知されていなかったんですが、そんな中で私たちは「人類が地球に生き残るにはどうしたらいいのか?」という究極の机上の空論を掲げて、それをボランティアやNPOではなく、あえて株式会社という営利団体としてスタートしました。

そして今日のテーマである「エシカル」という言葉。日本語で直訳すると「倫理的とか道徳的」という意味で、いわば概念なんです。

なので、たとえば道徳ってなに?って聞かれたら、ロジカルに説明できる人っていないように、「エシカル」もやっぱり言葉で正確に説明できるものではないんだと思います。

でもその概念を商品やプロジェクトに落とし込み、かっこよく分かりやすい形で少しでも多くの人に発信するのが我々の使命だと思っています。


龜石太夏匡(かめいし たかまさ)
学生時代から脚本家を志しながら俳優としても活動し、北野武監督「ソナチネ」等に出演。1993年、2人の兄とともにアパレルショップPIED PIPERを立ち上げる。その後、俳優の伊勢谷友介との出会いから再び脚本家の道へ。2002年「カクト」、2008年「ぼくのおばあちゃん」、2012年「セイジ 陸の魚」などの映画を手掛ける。2009年、伊勢谷友介と共同代表で「人類が地球で生き残るためにはどうするべきか」を理念に株式会社リバースプロジェクトを設立。


 

エシカルに向き合う人達



信田:経済産業省といっしょにASEANの国のデザイナーを招致してファッションショーを行うプロジェクトを行なっているのですが、その中でフィリピンの若手の3人のデザイナーに話を聞く機会があり、話を聞いたら3人とも口を揃えて、「社会問題をどうファッションを通して解決できるかを考えている」と答えるんです。

まず前提として社会問題の解決を掲げて、それを背景にブランドを立ち上げていて、日本のデザイナーはそういった意識に欠けているなと思いますね。


亀石:日本のデザイナーの方達もそういった意識はもってるとは思うんですよ。

ただ、そういった青臭いことを堂々と言うことができないんでしょうね。


信田:そうですね。そういったことが堂々と言える環境やきっかけは私たちが作ってかないといけないなと思っています。

『ジョルジオ・アルマーニ』という誰もが知る世界的なデザイナーが、最近ミラノコレクションが元気がないということを危惧されていて3年程前からアルマーニさんが所有する建物で若手デザイナーを集めてショーを開催するというプロジェクトを行なっていて、今年は日本の『ヨシオ・クボ』のデザイナーが招致されました。

わざわざ呼んでいただいたので、何か普段は作らないコレクションピースを作ろうと思って本物の毛皮をで作った豪華なファーを2つくらいつくって用意していきました。

ショーのバックステージでアルマーニさんにコレクションピースを見ていただく機会があったのですが、そのファーを見て急にアルマーニさんの顔付きが変わって、「これは本物か?」と聞いてきたんです。

そこから毛皮の問題についてすごく熱くお話していただいて、こんな大御所の方でも当たり前のようにそういった環境問題について意識をもってるんだなとびっくりしました。


亀石:エシカルとかエコを専門にやってる団体さんとかになると、ストイックになりすぎて自分たちの理念にそぐわないものであれば絶対やらないってスタンスのところもあります。

でも、僕はそうじゃないと思っていて、それぞれの感覚でどんどんいろんなものを取り入れていけばいいと思うんですよね。

例えば今日の僕の服装を紹介すると、このジェケットは父親が30.40代のころにきていた服装をリメイクしたもので、シャツは自分たちで作ったオーガニック素材のも、パンツは友達のお店で買ったものです。

これって僕の中では全部エシカルなんです。

小さいことからでもいいから、こういった意識をまず持つことが大事だし、それが社会システムを良い方向に変えるきっかけになるかもしれないと思ってます。





 

付加価値が大事



信田:やっぱり服を作る上での基準って、最終的なアウトプットがかっこいいかどうかが全てのだと思うんですよね。

なので、啓発もいいんですが、単純にカッコよくするためのツールとして「エシカル」なども選択肢としてあるべきだと思います。

エシカルブランドを名乗っていないブランドにも、自然にエシカルを取り入れれてもらえるきっかけが増えることがいいことなんだと思っています。


亀石:その通りだと思います。

僕らも一番初めに実感したのが、やっぱり消費者の皆さんに対して「エシカル」だから売れるなんてことはないんですよね。

これオーガニックだからとか、これエコだからとかって興味持って買ってくれるお客様はほんの一部で、実際問題ほとんどの人は正直やっぱりそこまで関心ないんです。

そう考えた時に、もっと違う形で「エシカル」を身近に感じてもらえるシステムやプロジェクトができないかなと考えて、企業の制服をエシカル素材に変えるプロジェクトを作っていろんな企業に提案してみたんです。

従来のものより1着ぐらい数百円くらいコストアップしちゃうんですけど従来の制服ってその会社の総務部の方が百貨店や商社に制服を作りたいと相談して商社さんが提案したものを価格優位性で決めるという特に何もこだわりのない仕組みだったので、最初は「こんなの話になんないよ」って言われました。

でも、逆にその数百円を惜しまないと感じるような付加価値をつけてあげるといいんじゃないかと思って色々な企画をご提案したんです。

例えば、有名なデザイナーとコラボして企業理念などを制服に落とし込んだかっこいいデザインにしたり、社員がその制服を着ることでモチベーションがあがるようなデザインやストーリーを加えたりといった付加価値を提案し、賛同していただいた企業様と、このプロジェクトを実行することができました。

ただ単に「エシカル」を発信するだけでなく、いろんな切り口で発信することでリーチする層も広がって認知度も理解も深まるなと感じました。

これもプロジェクトの面白いとこであり可能性を感じますよね。


信田:付加価値は大事ですね。

今、商品が売れないって状況だからこそ、そのブランドや商品いかに付加価値をつけるかっていうのはすごく大事になってきているし、「エシカル」ってすごくいい付加価値を与えるツールだとおもうんですけどね。


亀石:ほんとにそう思います。

エシカルって実際だれも否定はできないものだと思うんです。それを突きつけた時に誰もが共感できるものなんですよね。

それって付加価値としてはすごくいい武器になるかと思うんです。

なので、今後エシカルを発信する側としては、これを「流行」で終わらしてはいけない。「文化」に変えていく役割は大きいと思います。


信田:某大手商社の社員が大手スポーツメーカーに対する商品開発の企画を担当していてテーマはエシカルだといってました。

全体的に「エシカル」を受け入れていく風潮にはなりつつあると感じますね。




 

これからのプロデュース戦略



信田:やっぱり技術力が高い産地の工場ほど、クリエイションに関心がないんですよね。やっぱりそのバランスの取れてる人がいない。


亀石:それをどうプロデュースして繋げるかってのが大事ですよね。


信田:そうですよね。なので今後は技術をもった産地の工場などと優秀なデザイナーの接点を作っていけたらなと思います。

デザイナーと産地を絡めたプロジェクトをどんどんやって、本当にセンスのあるデザイナーとコラボして双方にとってメリットがあるようにしたいと思います。

日本には200以上の産地があって、その中の50くらいの産地は、今ピックアップして発信すれば世界でも通用する技術を持っているともいわれてるんですよ。

もちろん5年先に終わってしまう産業も出てくるわけで時間も限られているので、どんどん世界に発信していきたいと思いますね。


亀石:おっしゃる通り、時間が限られていると思いますね。

僕らの目標って早くこのリバースプロジェクトって会社を早く潰すことなんですよ。

僕らがこういった活動をする必要のないくらい「エシカル」だとか「サスティナブル」が世の中に浸透すればいいなと思っているので。

去年ですが「GIVE LIFE」というお店を原宿にオープンし、やっとエシカルに特化したステージができたんです。

ここから産地であったりとかいろんなものを発信していければと思っています。

偽善とかではなくて、「人類が地球に生き残るためにはどうしたらいいのか」というテーマを多くに人に共有して、少しでも考えるきっかけになればなと思います。



次回:【エシカル談義#2 岡田有加×大釜翼】エシカルが普及するための効果的なアプローチとは?