「リアルな日本をNYで表現したい」アーティストのFantasista Utamaroが考えるNYにおける日本文化のあり方とは?

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人種のサラダボウルと形容されるニューヨーク。

多様な文化が入り混じるこの街で本当の日本文化を伝えようと格闘する一人の男に出会った。その男の名はアーティストのFantasista Utamaro。

村上隆やMr.と共にPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)のミュージックビデオを制作など、アーティストとして活動する彼にニューヨークにおける日本文化について、また自身が発起人となり第一回目を迎えるフェス「TOKYO X BROOKLYN」について聞いた。


ーー日本ではどういう仕事をされていましたか?

多摩美術大学を卒業後、東京で15年ほど広告のアートディレクションとデザインをやりながら、ミュージックビデオやCM制作などに携わっていました。しだいに東京とニューヨークを往復する生活になり、3年前からニューヨークに拠点を移しました。


ーーなぜニューヨークに?

日本では知名度が上がるほど出口が無くなっていくという印象がありました。結果的に絵描きや映像作家などは、広告クリエイティブに消費され、クリエイティビティが徐々に削れてしまうという現状を目の当たりにしました。

僕自身、東京で戦い続けて来ましたが、気がつくと若い時に描いていた未来とは違うものになっていました。知名度=安定という構図があるように感じ、どうしたらいいのか日々悩んでいました。

日本のクリエイティブ業、日本の社会の関係性は基本構造として縦割りの風紀があって、絵を描いたりデザインをするクリエイターたちは、作業員的な扱いを受けリスペクトされない環境が多いように感じたんです。

でも名前が売れた瞬間に手のひらを返して、昔は「君、誰?」みたいに接してきた人が、少し名前が売れると「ウタさんウタさん」って会ったことも無いのに態度を変えるんですよね。

そいうのも嫌でしたね。あと「なぜモノを作っているのか」「どういう気持ちで制作しているのか」というのがあまり大事にされない環境に違和感があって、世界中心の都市と言われるニューヨークに行こうと決意しました。

もう一つの理由は、アメリカと日本を結ぶ“橋”のような存在になりたいという思いです。

日本には類い稀な才能のあるクリエーターがたくさんいるけど、世界というフィールドにおいて、知られる機会が少ないのがもったいないと思っていました。

そういった人たちを知ってもらえる場所を作って、日本の面白いクリエイティブを世界に広げたいという思いがありました。


ーーニューヨークではどういったお仕事をされていますか?

日本のクライアントの仕事をやりながら、いろいろなブランドとアートワークでコラボレーションするということを引き続きしています。

グラフィックデザインの仕事でロゴを作ったりのデザイン系の仕事をやりながら、作品を作って展覧会をやったりしています。





ーー拠点を移して3年、ニューヨークにどういった印象を受けましたか?

常に「お金、お金」という感じで資本主義とはこういうことか、というのを感じました。

あと物事の状況や人種によって態度を変えるとか、この街の人は人間じゃないんじゃないか?と思うことも多いです。例えば、表面的にはニコニコしているけど、実際は相当腹黒いとか、お金や契約の話になった瞬間に、ガラッと変わるとか。

日本でもそうですが、半端なく露骨なので、凹む事が多々ありますね。あとニューヨークに来てから、ファインアートに完全に興味がなくなりました。


ーーどうしてファインアートに興味がなくなってきたのですか?

ニューヨークのチェルシーのギャラリー街に行っても、あまりおもしろくないんですよ。みんな絵を見て買うというより、どこのギャラリーでやってるか、どういった人たちがコレクターなのかという世界ですよね。

お金という仮想価値に魂が抜き取られて、心と体が乖離しちゃってるように感じました。もうこれ人間じゃないな、というかお金という価値の奴隷のような感じで。

支配層のお金持ちの人とかは、人の魂でさえトレードできると思っているんじゃないかって思っちゃいますよね。

なので、インターネット以降、生の声が聞きやすくなったパブリックの方が圧倒的に熱がうごめいている気がするので、熱量のある場所や、そこにある精神とコラボレーションしてアート作品を制作することをやりたいと思っています。

この前は、ボクシングジムをジャックして、僕のアート作品をその空間に紛れ込ませるような展示をしました。


ーー先日はパリのアートフェアに参加されていましたが、ニューヨークや日本と比べてパリはどういった街でしたか?

フランスの方がまだ日本に近いと感じました。歴史が長く、心の繋がりといったものをすごく大事にしているように感じました。

例えば、リトグラフをやっている印刷スタジオに行った時ですが、儲けよりも文化を大切にしようとしていて、人間が築いてきた想いとか歴史、技術を守ろうとしているのを感じましたね。そこで僕のモノ作りへの思いを話したら、「僕らはいつでも君の作品作るよ」って言ってくれたんですよ。

ニューヨークの荒波に揉まれてから、こういう普通っぽい事がとても尊いと感じられるようになり、人間らしさを取り戻せたんじゃないかな?とある意味成長したかなあとも思います。

一方でニューヨークは発表の場といった印象で、一発当たればOKみたいな感じですかね。水車のように常に回り続けている。だからニューヨーク=ビジネスなんだと思います。悲しい街だと思います。

パリは歴史があるし、芸術の歴史もとにかく長くて、そして日本も古い歴史と伝統があるじゃないですか?だから日本とパリは近いし、ニューヨークとの違いは歴史の質量の違いなのかなっていうのを感じましたね。

どちらがいいというのは僕には判断できませんが、ニューヨークにいる事でパリに行って気付いた事はとても多かったです。






ーーUtamaroさんが発起人となったフェス「TOKYO X BROOKLYN」がついに開催されますね。東京とブルックリンの文化を融合させたフェスで、ギタリストのMIYAVIさんの出演にアニメ「AKIRA」や「攻殻機動隊」が上映される予定だと聞きました。どのような思いでこのイベントを企画したのですか?

遠い彼方のこの場所で、あらゆる日本の「今」が詰まった場所を作れたら新しいお祭りができるんじゃないか?と思ったのが始まりです。

これが売れるからとかじゃなくて、日本の伝統工芸とかアニメや漫画それに食も、ジャンルを超えてつながる文脈的な事にはフォーミュラ(構成)があって、日本の文脈をきちんと伝える必要があると思った。

金儲け目線に縛られずに、日本のさまざまなモノを集めた場所を作りたいなあと思ってこの地に渡ってきたので。イメージ的には、日本を訪れる海外の観光客が行く場所とかあるじゃないですか。

例えば、京都とか秋葉原、新宿のゴールデン街のような熱量が詰まったスペシャルな場所って日本人が行ってもとても興味深いところだし、外国人の観光客にとってはものすごい衝撃ですからね。

そういった熱量のかけらだけをまとめて世界中心の街、ニューヨークで発信できたら、日本の文化がもっとグローバルになると思うんです。そして日本の文化がもっと発展すると思うんです。

ニューヨークはこんな大都会なのに、日本のカルチャーは意外に表面的にしか知られていないなと感じることが多かったんです。例えば、ニューヨークではコミコンとかオタクのフェスもやっていますが、お客さんは単純に仮装をして「イエーイ!」みたいなノリで、あれ?ちょっとまてよ、という違和感がありました。

日本の文化って漫画やアニメもそうですが、クリエティブの形が職人気質で内向的なレイヤー構造だと思うんです。例えば、コスプレも、ただ仮装で面白いことをやるよりかは、2次元愛から始まって、そのまま2.5次元に突入したような世界がまさにコスプレというファンタジーだと思うんです。

ただワイワイはしゃぐとはわけが違うというか、物事の見えない場所のその中に、もう一歩踏み込んでいく、という奥ゆかしいコンセプトが面白いと思うんです。こちらの人は表面的にしか捉えていない。

それはそれでいいんですが、愛だったり深みを感じれば感じるほど、物事の本質的な価値が、より深くなり、幸せ度数は高くなる気がするんですよね。そういう「場所」「場所」で普遍的に起こっているリアルさを表現できたら、本望だと思います。


ーー東京だけでなくブルックリンの要素を入れたのはなぜですか?

ブルックリンは熱いカルチャーや良いムーブメントが生まれる場所だと思うんです。クリエイティブな姿勢があって、自然発火的に文化が広がって行く場所という印象があって、ブルックリンという名前がチームのブレインストーミングで出てきたんです。そして、東京VSブルックリンというコンセプトが生まれました。


ーー「TOKYO X BROOKLYN」の来場者にはどういったこを感じて欲しいですか?

「こういうの待ってました」って思ってもらいたいですね。まだ1回目で、僕もわからない事だらけでオーガナイザーのみんなに迷惑をかけたりして、本当にすいません……って感じで。

でも、ちらっと立ち寄った人も楽しめるし、興味がある人は更にもう一歩踏み込んだ深いところに入っていけるような2レイヤーある構造の場所になればいいなあと考えています。

例えば、「AKIRA」と「攻殻機動隊」は今回ただ上映するだけですが、どういう作品なのか、どういう文脈でこの作品が生まれたかなど文脈や前後関係などの相対を説明するために、原画やアニメのセル画を展示したり、いろいろなアーティストとのコラボレーションができたら、とても価値のある場所になっていくような気がします。


ーー今後の展望についてお聞かせください。

まだ誰にも知られていなくても、素晴らしいものを作る人はたくさんいると思うんです。そういった素晴らしい人を探し続けて、世の中に伝えたいと思います。そして大切にしようという想いを共有していきたい。

幸せに感じる瞬間を少しでも増やせたらと毎日思います。そのためにも僕自身がエゴを捨て、心と腕を磨いて知名度を上げる必要があります。もっと僕が世の中に知られるようになれば、僕がやることに対して価値がつくと思うんですよね。

ズルくならない、流されない、嘘をつかず、そしてお金に魂を売らず、何事にも感謝を忘れず頑張っていこうと日々心に語りかけています。きちんと人間として生きたい。

ニューヨークという街は人間じゃないヒトが多いんですよ。人間だけど、嘘つきやズルい人、ごまかす人が多すぎる。正当化し続けて、競い合って蹴落としあう。もしあなたが明日この世界がいなくなりますよって告げられたらそんなもの意味あるの?って思っちゃう。

だったら、もっと愛し合って認め合って、許し合う事の方がどれだけ尊いことかって思います。ただ、現代はそういうことに気付けないし気付かせないつくりなんですよね。それが社会が社会であり続け、お金が生まれ続ける理由だと思うんです。社会にとっては人の心よりも空気、流れが重要なんですよね。だから僕はもっと叫びたいと切に思うんです。



 

Fantasista Utamaro
www.fantasistautamaro.com

Tokyo x Brooklyn
www.tokyoxbrooklyn.com
東京とニューヨークのクリエイターが集うフェスティバル。ギタリストMIYAVIをはじめとする両都市のミュージシャンの演奏、ラーメン屋やブルックリンのピザ屋「ロベルタス」も出店する。アニメ「AKIRA」や「攻殻機動隊」の上映に、MEGURU YAMAGUCHIなどライブペインティングや素晴らしいアーティストたちの作品も展示する。
【日】5/13(土)・14(日)
【時間】12:00〜22:00
【場所】Brooklyn Expo Center : 72 Noble St., Brooklyn, New York
 



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