知られざる伝説的ファッションアイコン

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近年、デザイナーとして活躍するRihanna(リアーナ)をはじめ、Kanye(カニエ・ウェスト)、Selena(セレーナ・ゴメス)らミュージシャンがミューズという枠にとどまらず、作り手として注目を集めるようになった。彼らの存在は、常にクリエイターにインスピレーションを与えてきた往年のロックスター、Mick Jagger(ミック・ジャガー)やDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)の姿を改めて思い起こさせる。
 
しかし、今日のファッションを語るうえでかかせない人物がいる。

かつて独創的なスタイルを築き上げ、この世を去った今でもなお、ランウェイに絶大な影響力を誇る伝説的な男を知っているだろうか。

シャイニーヒールでイギリス全土を騒がした彼の名は、Marc Bolan(マーク・ボラン)。
 
30歳の誕生日を目前に起こった自動車事故による死から40年、彼の近代ファッションに与えた革新の軌跡をたどる。


バンドT.Rexの中心でパフォーマンスするマーク・ボラン


 

「彼はトレンドを追っていたのではない、ファッションを生み出してきたのだ。」

ボランとボウイの広報を務めたAlan Edwards(アラン・エドワーズ)はそう語る。

「黒髪のカーリーヘアにアイメイク、そして独特なアンドロジナスなルックス、マークは今日まで続くスタイルのパイオニアだった。」彼のヒッピーシックなエッセンスは、Lenny Kravitz(レニー・クラヴィッツ)からKate Moss(ケイト・モス)まで、様々な人に影響を与えてきた。

加えて、スラッシュ(1972年のボランのアルバム“The Slider”のカバーとなったポートレートに象徴されるルック)はSt.Vincent(セイント・ヴィンセント)やJames Bagshaw(ジェームスな・バッグショー)のアウトフィット、また、映画“アリス・イン・ワンダーランド”にもそのエレメンツが生きている。

しかし一般的には、ボウイがグラムロックの象徴として歓迎された一方で、彼の存在は知られていない。

Mark Feld(マーク・フェルド:ボランの本名)は ロンドンのユダヤ人家系に生まれる。常に有名になりたいと思っていた彼は、雑誌でモッドスタイルを披露し、百貨店に等身大のパネルを置いてソロ活動をはじめるが、70年代初頭にT.Rex(ティラノサウルス・レックス)というバンドを組む。

アメリカでブレイクすることはなかったが、彼のコークスクリューヘアーや奇抜なメイクアップ、また派手さと華麗さを兼ね備えた装いは、きらびやかな時代を反映しグラムロックムーブメントの先駆者となった。

 「今日、数多くのファッションデザイナーが彼のスタイルを参考にしています。」

ヴィクトリア&アルバート博物館シニアファッション・テキスタイルキュレーターのOriole Cullen(オリオール・カレン)は語る。

「例えばエディ・スリマンがいた頃のSaint Laurent(サンローラン)が発表した、チャンキーヒール、ベイビードールドレス、パイソンジャケットのように、彼のスピリットが詰まった服を何度も目にします。」


Topman 2016年秋冬コレクション
 


カレン氏によると、ボランに魅了されたデザイナーは他にもいる。

2017年秋冬のSaint Laurentのグリッタースペースブーツや、Anna Sui(アナ・スイ)のベルベットパンツ、2017年春夏のBalmain(バルマン)のきらびやかなジャケット、ビビッドカラーのフレアドレスなど、ビッグメゾンのランウェイでも影響力は絶大だ。

また、英紙ガーディアンは、2016年のTopman(トップマン)のコレクションが、ボランにインスパアされているとも報じた。
 
さらに、実力派の若手デザイナーも彼にインスパイアされているようだ。

Michael Halper(マイケル・ハルペーン)は、2月のロンドンファッションウィークでグリッターな生地のワイドフレアパンツを披露した。そして、ロイアル・カレッジ・オブ・アートを卒業したばかりのデザイナーのPaula Knorr(ポーラ・クノール)もラメ地を使ったワイドフレアシルエットを発表した。

Saint Laurent 2017秋冬コレクション


グッチの最近の広告キャンペーンでも、スパンコールのまばゆいジャケットにT.Rexの楽曲名“Ballrooms of Mars”のロゴが施されている。
 
ポール・スミスも熱心なボランのファンのひとりとして、次のように話す。「マーク・ボランはいつでもシアトリズムに満ちている。しかし悲しいことに、現代の音楽シーンでは彼のスタイルの面影は消え去ってしまい、スキニーデニムやTシャツ、ショートヘアばかりが目立つ。」
 
デザイナーのJohn Varvatos(ジョン・バルベイトス)は、自身をこのロッカーの“ビッグ・ファン”と呼ぶ。バルベイトスのTシャツにはボランのイメージがプリントされたデザインも多く、彼のスタジオにはボランのポスターが掲げられている。

バルベイトス氏にとって、ボランはいつだってインスピレーションの源だ。

「特にメンズウェアにおいて、スタイルとは、個々のピースを指すのではなく、すべてのアイテムを合わせた全体のルックで決まるものです。」と、彼は語る。


Anna Sui 2017年秋冬コレクション


まるでボランはフロントロウに永久指定席でも持っているかのように、彼を身近に感じる。

ロイアル・カレッジ・オブ・アートのファッションコースでディレクターを務め、ブランドBoudicca(ボディッカ)のデザイナー兼創設者でもあるZowie Broach(ゾーイ・ブローチ)は、ボランが現在のファッションシーンにいる姿を浮かべ、このように述べた。

「彼のスタイルは羨望の眼差しをうけただろう、そして彼は今日のファッションを熱愛しただろう。」
 
彼のルックから生まれたワードローブの数々に出会うたびに、マーク・ボランを思い出したいものだ。



via New York Times