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〝See now , Buy now〟が変える新たなファッションの未来とは

2016/11/21 04:40


今まで世界で行われてきたファッションショーのその後は、新聞や雑誌、メディアを通じて新たなトレンドを消費者のもとへと発信されてきた。

しかし、近年世界のファッションショーをリアルタイムで中継したり、ランウェイで見た商品がそのまま店頭に並んで買えるなど、「See now , Buy now」のシステムを導入し始めるブランドが現れるなど、ファッションショーの在り方に変革が起きはじめている。

この新しいファッションシステムは、長い歴史と伝統のあるファッション業界において、新たな変革をもたらすものなのか。それとも一時的な流行で終わるのか。

そんなファッション業界を変えるかもしれないと世界中で話題となっている「See now , Buy now」の実態について紹介しよう。

 

〝See now , Buy now〟とは?


出典:http://www.tokyofashiondiaries.com/wp-content/uploads/2016/06/buynow_img-1.jpg



『See now, Buy now』とは、その文字通りショーで見たモノをすぐに買うことができるというシステム。一般的にショーで発表された服は、数か月から半年ほど待たないと店頭に並ばなかったのが、『See now, Buy now』では1週間ほど、または早ければその日に買うことができるのだ。

 

なぜ〝See now , Buy now〟が生まれたのか


そもそもなぜ〝See now , Buy now〟というシステムが生まれたのか。ファッション業界に変革を与えるようなシステムを導入すると至った原因を少しでも理解する必要がある。

ニューヨークファッションウィークを取り仕切る業界団体「CFDA(Council of Fashion Designers of America)」は、ボストンコンサルティンググループと調査を行い、そのインタビューに応じたデザイナー、報道関係者、小売業者らを含む50名全員が「この市場は変革の時を迎えている」という見解で一致したという。

そのレポートには、トレンドとデザインの消費スピードの加速している点が原因の一つと問題視されていた。

有名ブランドのファッションショーの発表後、メディアを通じて、ファストファッションブランドは、トレンドを取り入れた商品をあっという間に店頭に飾る。そして有名ブランドの商品が店頭に並ぶ頃には、「古い」という感覚が生まれるようになる。

また、店では商品の出荷が前倒しになり、消費者が感じる季節感とズレが生じて、値下げするセール時期を早める。こうしたサイクルを維持するために、デザイナーは大きなプレッシャーを背負うことになると指摘した。

調査結果を踏まえて、CFDAが提案する新たなビジネスモデルは、デザイナーのクリエイティビティを守り、デザイン・生産・出荷の期間を短縮することなく、実際の季節に合った(インシーズン)の商品を展開すること。つまり〝See Now, Buy Now(いま見て、いま買う)〟を実現し、購買行動を活性化することであると至ったそうだ。

 

出典:http://gipj.net/ginew/wp-content/uploads/2016/04/AdobeStock_81448674.jpg

 

〝See now , Buy now〟に対する反応



実際にいくつかのブランドでは「See now , Buy now」をすでに実施している。それに対して、世界のファッション業界ではどのような反応を示しているのだろうか。

先駆者ともいわれている「レベッカ・ミンコフ」は、一足先に「See now, Buy now」形式のショーを行い、ECと店舗で過去最高の売り上げを立てている。

それに続き、ショーとオンラインショッピングを組み合わせた施策を2010年に導入し、アウターウェアとバッグをショーのライブ配信し、直後に受注販売を行った「バーバリー」は、全てシーズンレスのコレクションに変更し、2017年春夏コレクションから、全アイテムを終了後に購入できるようにした。

「トム・フォード」や「トミー・フィルガー」、「ラルフ・ローレン」は、今すぐ着られる2016年秋冬コレクションを発表するなど、「See now , Buy now」 にそった消費者向けの発表形式に変化した。

『L2インク』というデータ調査団体の調べによると、今回2017年春夏のニューヨークファッションウィークに参加したブランドの21%が「See now, Buy now」形式を行ったそうで、賛同者が思ったより多いことがわかる。


出典:http://ready-to-fashion.com/news/seenowbuynow2/



その一方、「グッチ」や「サンローラン」などの名だたるラグジュアリーメゾンを傘下に抱えるKering(ケリング)グループの総帥や、フランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会のプレジデントは、「See now , Buy now」形式のファッションショーに対して異議を唱えている。

また、「シャネル」と「フェンディ」というラグジュアリーメゾン2社を手がける、カール・ラガーフェルドは「Business of Fashion」の取材において「(ショーで見てすぐ買える施策について聞かれ)めちゃくちゃだ。」と一蹴している。
 

「私がファッションショーにてコレクションを発表するのは、それを見た顧客がじっくりと時間をかけて吟味し、工房のスタッフが最高の品質の製品を万全の状態で生産し、また同時にエディターたちがその作品を美しく表現してくれるから。もしそれが無くなったら、何もかも終わりだ。」



インタビュー内において同氏は語った。少なくとも「フェンディ」、「シャネル」においては従来の発表方法を継続するとの見方を示した。

 

出典:http://www.buro247.my/fashion/news/see-now-buy-now-is-immediacy-the-future-of-fashion.html

 

〝See now , Buy now〟の課題



「See now , Buy now」を実現するためには、ブランド側がどのような戦略で消費者にアピールするかを考慮しなければならない。

ニューヨークファッションウィークを取り仕切る業界団体「CFDA(Council of Fashion Designers of America)」は、“The Future of NYFW:Guidebook - How to Transition to In-Season -”を公開。そこには、デザイナーに向けて4つの選択肢を提案している。


1,現在のショー形式を維持現在のショー形式を維持し、商品が店頭に並ぶ約6か月前に、小売業者と報道関係者向けの情報提供を行う。

2,ショーは行わず、業界プレゼンのみ。従来のような大規模なショーは行わずに、小売業者と報道関係者向けの小規模なプレゼンテーションやミーティングを実施して、製品とその背景にあるストーリーにフォーカスした長期にわたるメディア展開を行う。これは特に、若手デザイナーに有効。

3,ハイブリッドイベント。すぐに買える服と、3~6か月後に発売される服を組み合わせたプレゼンテーションを行う。従来のファッションショーに、“Buy Now, Wear Now”が可能なカプセルショーを組み合わせるかたちもありうる。

4,季節に合わせたファッションショーと、事前の業界プレゼンおよびメディア展開。イベントやショーを季節に合わせた内容にシフトし、購買を活性化。商品が店頭に並ぶ6か月前に業界向けのプレゼンと長期のメディア展開を行う。

1,が最も現状に近く、4.が理想形だ。しかし、一足飛びの変革は難しいため、CFDAはハイブリッドイベントを推奨している。一部のデザイナーはすでに対応を始めているそうだ。

また、ファッションショー後というのは、ジャーナリストや編集者から批評を受けたり、ファッション業界関係者からの意見を得たりする。

それに対して熟考し選び抜かれた商品が約半年後に店舗へと並べられる。一方「See now , Buy now」は、その期間もない、何が売れるのか見当しにくい状態で注文に備えるというのは、場合によっては在庫の山を抱え込み、あるいは製造が間に合わないということにもなりうる。

製造コストのかかる高い商品に関しては、前もってつくるのは大きな賭けとなるのだ。

こうしたデザインを詰め直すというプロセスがなくなってしまえば、業界のクリエイティヴィティの低下につながるとの問題点を指摘している意見もある。

これからファッションショーの発表形式方法や、どのような方法で検討し製造に乗り出すかが、課題となってくるだろう。

 

〝See now , Buy now〟の導く未来とは



出典:http://www.apalog.com/sachiehirayama/img/102/MDIxMzE2LXJlYmVjY2EtbWlua29mZi1sZWFkArA.jpg


「See now , Buy now」の魅力は、ファッションショーという新たなファッションが生まれている最中に、自分が着たいな、欲しいなという思いが消えないまま、そして半年間も待たず、すぐに買えて着られるということである。

また、消費者向けファッションショーと業界者向けファッションショーを行う2段階の形式を取り入れるなど、これからさまざまなファッションショーの在り方が生まれるかもしれないという期待が膨らむのも魅力だ。

「See now , Buy now」が世界のファッションショーに定着していくのかは未知である。しかし、ビックメゾンの反対異論がある中で、これから増えていくことは確かであろう。

いずれは、東京コレクションでも実施されるかもしれない。こうして世界中で消費者とファッションとの距離感はより近くなっていくだろう。

ファッションショーはインフルエンサーなどによってSNSで広まり、消費者は今すぐにトレンドのアイテムを買えるとなると、トレンドを発信する「ファッション雑誌」の存在意義が無くなってしまうのではないだろうかという不安にも駆られる。

「See now , Buy now」によって、ファッション界にはそんな何か得るものと失うものがでてくるであろう。その大きさの差が大きければ大きいほど恐ろしい。

「See now , Buy now」が変えるこれからの新たなファッションの未来がどのようなものなのか、期待と不安が入り交じる。




Atsuko Kawasaki